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Chrome DevTools MCPでAIコーディングエージェントの『盲目プログラミング』に終止符を打つ
目次
Chrome DevTools MCP でAIコーディングエージェントの「盲目プログラミング」に終止符を打つ
1. なぜ Chrome DevTools MCP が必要なのか
GitHub Copilot、Gemini CLI、Claude、Cursor といった先進的な AI コーディング支援でも、これまでは ブラウザ内でコードがどう動いているかを自分の目で確認できない という制約がありました。Google の公式ブログが表現したように、AI は「目隠しをしたままプログラミング」をしていたのです。
この課題を根本から解決するのが Chrome DevTools MCP(Model Context Protocol)サーバーです。Model Context Protocol (MCP) は、LLM(大規模言語モデル)を外部ツールやリアルタイムデータへ接続するためのオープンソース標準です。Chrome DevTools MCP はこの標準をベースに、Chrome DevTools の DOM 調査、ネットワーク解析、パフォーマンス計測、ユーザー操作シミュレーションといった全機能を AI エージェントへ開放します。AI はコードを生成するだけでなく、ブラウザ上で検証・診断・最適化まで自動で実行できるようになりました。
2. Chrome DevTools MCP が提供する主要機能
Chrome DevTools MCP は、検証・ネットワーク診断・ユーザー操作再現・レイアウト調整・パフォーマンス分析を一つのプロトコルで統合します。
機能カテゴリ | Chrome DevTools MCP で可能になること | プロンプト例 | 出典 |
---|---|---|---|
リアルタイム検証 | AI が生成した修正をブラウザ上で自動検証し、推測ベースの公開を防止。 | Verify in the browser that your change works as expected. | Google I/O アナウンス |
エラ―診断 | ネットワークリクエストやコンソールログを調査し、CORS や 500 エラーの原因を突き止める。 | A few images on localhost:8080 are not loading. What's happening? | Chrome DevTools チームブログ |
ユーザー行動シミュレーション | ナビゲーション、フォーム入力、クリック、ドラッグを再現し、複雑なユーザーフローをデバッグ。 | Why does submitting the form fail after entering an email address? | Chrome DevTools MCP 実践レポート |
スタイル/レイアウト調整 | DOM と CSS をライブで検査し、実データに基づくレイアウト修正案を提示。 | The page on localhost:8080 looks strange and off. Check what's happening there. | Chrome DevTools ドキュメント |
パフォーマンス監査 | performance_start_trace などを駆使し、LCP や CLS をはじめとする指標を直接分析。 | Localhost:8080 is loading slowly. Make it load faster. | Web.dev パフォーマンスガイド |
さらに Chrome DevTools MCP では、スクリーンショット撮影 (take_screenshot
)、ビューポート制御 (resize_page
)、リアルタイムログ監視 (monitor_console_live
) などの高度なツールも利用できます。AI エージェントはシニアエンジニア並みのブラウザコンテキストを獲得します。
3. Chrome DevTools MCP の導入と設定手順
Chrome DevTools MCP を活用するには、VSCode/GitHub Copilot、Gemini CLI、Claude Desktop、Cursor などの MCP 対応クライアントにサーバーを登録します。
3.1 GitHub リポジトリ
公式リポジトリでは、ドキュメント、アップデート、ロードマップを確認できます。
👉 https://github.com/ChromeDevTools/chrome-devtools-mcp
3.2 VSCode / GitHub Copilot でのインストール
-
VSCode コマンドパレットを開く:
ctrl + shift + p
を押し、MCP: Open User Configuration
を選択。 -
mcp.json
に設定を追加:以下のエントリを追加して、npx
経由で Chrome DevTools MCP を起動します。{ "mcpServers" : { "chrome-devtools" : { "command" : "npx", "args" : ["chrome-devtools-mcp@latest"] } } }
-
動作確認:Copilot Chat で
Please check the LCP of web.dev.
を実行し、Chrome DevTools MCP から性能データが返ることを確認します。
3.3 Claude Desktop / Cursor でのインストール
-
Cursor の手動設定:
File -> Cursor Settings -> MCP -> New MCP Server
に進み、上記と同じnpx
設定を入力します。 -
Claude Desktop 拡張機能:GitHub Releases からプリビルド
.dxt
をダウンロードし、Claude Desktop の Extensions からインストールします。 -
接続とデバッグ:インストール後、以下のコマンドでフルセッションを開始します。
start_chrome_and_connect("localhost:3000")
これにより Chrome がリモートデバッグモードで起動し、指定 URL に遷移して Chrome DevTools MCP と接続されます。その後
get_network_requests()
やget_console_error_summary()
といったコマンドで本格的なデバッグが行えます。
4. Chrome DevTools MCP とログイン状態の維持
Chrome DevTools MCP は Chrome DevTools プロトコルのストレージ/セッション API を備えているため、AI エージェントが認証状態を“記憶”できます。
- Cookie の取得と書き込み:
get_all_cookies()
、get_cookies(domain?)
、set_cookie(...)
で認証 Cookie を監視・更新し、ログインフローをトレース。 - ローカル/セッションストレージ:
localStorage
やsessionStorage
の値を読み書きして、ブラウザ状態をサーバー側ロジックと同期。 - 認証トラブルシューティング:
get_network_requests()
でSet-Cookie
ヘッダーをチェックしつつ、get_console_error_summary()
で認証エラーを把握し、エンドツーエンドで原因を突き止めます。
このように Chrome DevTools MCP はブラウザの「記憶装置」にもアクセスできるため、複雑なマルチステップ認証フローでもデバッグが途切れません。
5. パフォーマンス最適化における Chrome DevTools MCP の実例
パフォーマンスチューニングは Chrome DevTools MCP の真骨頂です。あるチームは Lighthouse スコアを 83(黄色)から 97(緑) まで引き上げることに成功しました。ワークフローは以下の通りです。
- Chrome DevTools MCP をインストールし接続:Cursor に
chrome-devtools-mcp@latest
を設定してサービスを起動。 - パフォーマンス監査をトリガー:AI アシスタントに
Chrome DevTools を使って https://developers.chrome.com の性能を分析して
と指示し、Chrome を起動してトレースを収集。 - ボトルネックを解析:
performance_start_trace
の結果から LCP の悪化要因やロングタスク、レンダリング阻害リソースを特定。 - 改善と再検証:提示された対策を実装し、
Verify in the browser that your change works as expected.
などのプロンプトで再度検証を行い、スコアが目標値に達するまでループ。
Chrome DevTools MCP による自動化のおかげで、「分析 → 最適化 → 検証」というフィードバックサイクルが画面共有やスクリーンショットなしで完結します。
6. まとめ
Chrome DevTools MCP は AI 支援開発から「目隠し」を取り払い、Chrome DevTools と Model Context Protocol の融合によってリアルタイムデバッグ、パフォーマンスチューニング、セッション管理、ユーザーフロー再現を一気通貫で実現します。CORS の原因追及、レイアウトの安定化、ログイン状態の保持、LCP 向上などあらゆるシナリオで Chrome DevTools MCP が AI ワークフローに可視性と制御性をもたらします。ぜひ GitHub リポジトリでフィードバックを共有し、ウェブコミュニティ全体で Chrome DevTools MCP を進化させましょう。
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